法人が不動産を売却する際、収益の計上時期は税務にかかわります。
基本的には売却した事業年度に計上しますが、契約と引き渡しが期末を挟んで行われる場合など、どちらの事業年度で計上するべきでしょうか。
法人が明確にしておくべき収益の計上時期について解説します。
収益の計上はいつ?計上時期を決めるための基準について解説
不動産譲渡の収益計上時期は、原則として引渡日になります。
しかし、契約日(効力発生の日)に計上してもよいことになっています。
つまり、期末ギリギリで不動産売買契約を結び、期をまたいで引き渡しが行われた場合、売却収益をどちらの期に計上するか選択できるのです。
決算に向けて利益を上げておきたい、または、納税時期を次年度に先送りしたいなど、それぞれの事由をもとに選択するとよいでしょう。
間違えると大きな税負担!?計上時期を決める際の注意点
契約の効力が発生している状況であることが条件
計上時期をいつにするかは帳簿上の問題ですが、計上するためには「契約の効力が発生している状況」すなわち、売買契約が民法上成立していなければなりません。
契約日を基準として不動産譲渡が行われたと認められるためには、以下の事項についての確認が必要です。
●契約日が明確な契約書
●手付金の支払い条項の有無
●支払条項がある場合は、その履行の有無
手付金の支払条項がない売買契約書の場合、契約書類だけでは売買について本当に合意があるのか疑わしいケースがあります。
しかし、契約書作成後速やかに代金を全額支払い、登記関係書類の交付等を経て引渡しが完了していることにより、合意があると認められます。
期末ギリギリの契約は消費税にかかわる課税売上割合に注意
消費税に関して土地の譲渡は非課税とされていますが、その譲渡価格は一般的に大きな額となり、譲渡があった課税期間の課税売上割合が大きく低下し、結果的に消費税の納税額が多くなってしまう可能性があります。
たまたま土地の譲渡があったことで大きく減少した課税売上割合を適用して消費税額を計算するのは、事業の実態にそぐわないことから以下のような措置が認められています。
土地の譲渡が単発のもので、かつ、当該土地の譲渡がなかったとした場合には、事業の実態の変動がないと認められる場合に限り、次の(1)(2)の割合のいずれか低い割合により課税売上割合に準ずる割合の承認を受けることができる。
(1)当該土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間を通算して算定した課税割合
(2)当該土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合
課税売上割合に準ずる割合を適用するためには、納税地を所轄する税務署に承認申請書を提出して、適用しようとする課税期間の末日までに税務署長の承認を受けておく必要があります。
期末ギリギリの売却の場合、承認のスケジュールもふまえて計画しましょう。